5月, 2018年

利益確定していなければ申告は不要?【仮想通貨】

2018-05-25

Q40 利益確定していなければ申告の必要はないのでしょうか?

A40 単純に保持し続けている「ガチホ」状態以外は申告が必要

取得した仮想通貨を法定通貨に交換する、物品やサービスの購入に使用する、他の仮想通貨と交換する、などを行うことなく仮想通貨の取得後に単純に保持し続けているような状態以外は、損益を確定する行為と解釈されます。
その場合、当該仮想通貨の取得時の日本円での価格と損益確定にあたる行為の時点での価格が損益となります。

利益確定をした結果、(1)主たる給与以外の給与の収入金額(これがある場合)ならびに(2)仮想通貨の取り引き結果を含め給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超えるに至った場合には、確定申告が必要になります。

大部分の給与所得者の方は、給与の支払者が行う年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了しますから、確定申告の必要はありません
しかし、給与所得者であっても次のいずれかに当てはまる人は、原則として確定申告をしなければなりません。
1.給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
2.1か所から給与の支払いを受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
3.2か所以上から給与の支払いを受けている人で、主たる給与以外の給与の収入金額と給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人

 

海外で法人を設立、仮想通貨を購入した場合の取り扱いは?【仮想通貨】

2018-05-18

Q39 海外で法人を設立し、仮想通貨を購入した場合の取り扱いはどのようになりますか?

A39 タックスヘイブン税制の適用免除でない限り、日本と同額の納税義務があります

タックスヘイブン税制などに留意しなくてはなりません。
タックスヘイブン税制を簡単に説明すると、租税負担割合が30%以上の場合を除き、一定の要件を満たさない限り外国で実際に負担する税額と日本で当該事業がなされた場合に課される税額の差額分を、日本に所在する株主が負担するという税制です。
制度適用免除にならない限り、日本で事業を行った場合と同額の税金を負担することになります。

Q9:仮想通貨の利益は事業所得になりますか?
A9:その収入によって生計を立てているかかポイント、判例を参考に

情報第4号では、事業所得に該当する取り引きとして、以下の2つの例を示しています。

1.事業所得者が、事業用資産としてビットコインを保有し、決済手段として使用している場合、その使用により生じた損益

2.仮想通貨取り引きの収入によって生計を立てていることが客観的に明らかである場合、その仮想通貨取り引き

おそらく上記1に該当するケースは、個人においてはほとんどないかと思われますので、上記2に該当するか否かがポイントになってくると思われます。

最高裁判所昭和56年4月24日第二小法廷判決 民集35巻3号672頁ほか、過去の判例などを参考にした場合、その判断基準として考えられるのは次のような事項です。

①営利性、有償性の有無
②継続性、反復性の有無、
③自己の危険と計算における事業遂行性の有無
④取り引きに費やした精神的・肉体的労力の程度
⑤人的・物的設備の有無
⑥取り引きの目的
⑦その者の職歴、社会的地位、生活状況

以上を基準として、社会通念上事業といい得るか否かを総合的に判断することになると思われます。

 

個人から法人へ切り替える際のメリット・デメリットは?【仮想通貨】

2018-05-11

Q38 個人から法人へ切り替える際のメリット・デメリットを教えてください

A38 節税などのメリットも多いが、経費の増大などのデメリットも検討しましょう

まず、個人から法人化(法人成り)する場合の税金上のメリットは以下のような点になります。

法人化のメリット

1.税率
前述した通り、仮想通貨取り引きは雑所得に該当するため、個人の場合には所得税が5%から45%の累進税率により、住民税は一律10%の税金が課されることとなります。
さらに平成49年までは所得税率の2.1%相当の復興特別所得税も課されます。
その結果、所得が高い方で最高税率に該当する場合、課税所得の55.945%相当の税金が発生することとなります。

これに対し、法人に対する平成29年度の実効税率は33.8%(東京都の外形標準事業税非適用法人の場合)となっています。
つまり、一定の所得を超えると個人よりも法人の税率の方が低くなり税負担が軽くなる、この点が法人化するメリットの一つといえます。

2.給与所得控除の適用
個人事業の場合、収入から経費を引いたものが事業主の所得となり、その所得に対して所得税がかかってきます。

これに対し、法人化した場合には、社長の収入などは役員報酬という給与所得となります。
給与の場合、給与額面金額から給与所得控除を差し引くことができますので、一般的には個人事業の場合の所得税より税金が安くなるといわれています。

なお、給与所得控除というのは、サラリーマンの勤務にかかる「みなし経費」のようなものとお考え下さい。
一定の算式のもと、年収に応じた給与所得控除の額が所得税法で定められています。

3.所得の分散化
個人事業の場合にも、事業専従者給与の制度はありますが、仮想通貨取り引きの場合には前述の通り雑所得に分類されるため、親族に支払う給与を必要経費にすることは原則としてできません。

これに対し、法人の場合には、親族に対して支払った給与は、その職務内容からみて適正な金額の範囲内であれば、届け出を出さずに経費とすることができます。
また、一定の金額以下であれば控除対象配偶者や扶養親族とすることも可能です。

個人事業で、ある程度以上の所得がある人は、累進税率により税率が高くなり支払う税金も多額になります。
それゆえ、法人成りして親族へ給料を支給することで、一人で負担していた所得が家族に分散され、また、家族全員の給与から上記2で述べた給与所得控除額を差し引くことができるため、世帯全体で考えると、税金を下げる結果となります。

4.損益通算
個人が仮想通貨取り引きから得た所得は、原則として雑所得に区分されます。
雑所得で損失が生じた場合には、雑所得の範囲内での損益通算は可能となりますが、給与所得、事業所得等その他所得との損益通算は認められておりません。
したがって、仮想通貨取り引きで損失が生じた場合にも、給与等その他の所得と相殺することは認められず、その損失は切り捨てられることとなります。

これに対し、法人の場合には、その利益も損失も法人全体で計算することとなります。
もし法人が仮想通貨取り引きのみを行っている場合には、その仮想通貨取り引きにかかる損益が、法人全体の損益とイコールとなりますが、
仮想通貨取り引き以外の他の事業も営んでいる場合には、仮想通貨取り引きから生じた損益とそれ以外の事業から生じた損益とを合算した損益が、法人全体の損益となります。
つまり、仮想通貨取り引きで損失が生じたときでも、他の事業で利益が生じている場合には、双方事業の損益を通算することが可能となります。
この点は、仮想通貨取り引きを行う上で、個人と法人との大きな違いといえます。

5.退職金
個人事業の場合、本人または事業専従者に退職金を支払うことはできません。

これに対し、法人の場合には、適正な金額の範囲内であれば経営者や親族に対して、退職金を支給することができます。
退職金に対する所得税は、給料などの総合課税の所得に比べて非常に低く抑えられていますので、この退職金制度をうまく活用することで、効率的にリタイア後の資金を形成することが可能になります

6.欠損金の繰り越し
仮想通貨取り引きの場合、ときとして損失となる年もあるかと思われます。
ただし、仮想通貨取り引きの場合、原則として雑所得に区分されますので、その損失は、翌年以降に繰り越すことはできません。

これに対し、法人の場合には、仮想通貨取り引きによる損失などにより法人全体の決算が赤字となった場合、青色申告制度を適用している法人は、一定の条件のもとに翌年以降にその赤字部分を繰り越すことができ、
その翌年以降の利益と相殺することが認められています。その結果、繰り越し相殺することにより、その年の税金を減らすことができます。
なお、この翌年以降に繰り越される赤字額のことを「繰越欠損金」と呼びます。
この繰越欠損金は現行制度では9年間も繰り越すことができ、さらに平成30年4月1日から始まる事業年度以降で発生した繰越欠損金の繰越期間は10年間となります。

7.保険の活用
一般的に法人成りすると経費計上できる範囲が増えるといわれており、その範囲が顕著に増えるのが生命保険などの保険料です。
個人事業の場合、どんなに保険料を支払っても所得から差し引ける金額は上限12万円と決まっているため、節税効果として、ほとんど期待できません。

これに対し、法人を契約者として保険料を支払いますと、保険の商品によっては、半額または全額を経費とすることができる保険などもありますので、法人税の節税には大きな効果を発揮します。

生命保険を活用して退職金の準備や経営リスクの備えをするのであれば、節税効果が大きい法人で活用した方がより大きな効果を得ることが期待できるといえるでしょう。

次に、個人から法人化(法人成り)する場合の、税金上のデメリットについて説明します。

法人化のデメリット
1.法人維持費用の発生
個人の場合には必要なかった下記コストが発生し、若しくは増加します。

(1)法人設立費用
法人を設立する際に、登録免許税や定款認証手数料が発生します。
合同会社の場合約60,000円~、株式会社の場合には約21万円以上はかかります。
さらに設立手続きを司法書士などの専門家にご依頼される場合には、これに手数料が数万円加算されることとなります。

(2)登記費用
法人成りすると、会社法で定められている事項について登記しなければなりません。
具体的には、社名、会社の住所、事業内容、資本金の額、代表者の氏名、住所、役員の氏名などです。
これら登記された事項について変更があった場合、速やかに法務局へ変更の登記を行わなければなりません。
その変更の都度、変更内容に応じた登記費用が発生します。
また株式会社の場合には、取締役の任期が2年から10年と法定されておりますので、必ず任期改選の都度、登記手続きが必要となります。

(3)住民税均等割
法人の場合、住民税には所得に税率を乗じて計算する「所得割」の他に「均等割」と呼ばれる税金を支払う必要があります。
この均等割という税金は、資本金等の額や従業者数の人数に応じて金額が定められており、利益が出ておらず欠損年度の場合であっても発生する税金となり、最低でも年間70,000円の均等割の負担が発生します。

(4)社会保険料の発生
個人時代には社会保険の加入義務がなかった場合でも、法人成りすると従業員の数にかかわらず社会保険の加入義務が生じます。
たとえ代表者一人の法人であっても、加入義務は生じます。
社会保険に加入すると社会保険料の約半分を会社が負担することになりますので、これまで社会保険に加入していなかった場合には、かなりコスト増の印象を受けるかもしれません。

(5)経常コストの増加
個人の確定申告書はそれほど複雑ではないためご自身で作成される方も多いのですが、法人税や地方税の申告書は非常に複雑な仕組みになっており、
また申告書以外にも貸借対照表、損益計算書、個別注記表、勘定科目内訳書など提出しなければならない書類が増えます。
そのため、一般的には会計事務所と顧問契約を締結し顧問料を支払って依頼することが多いと思われます。

2.現預金の使い方
個人の場合、自分で稼いだお金は事業主のものとなりますので、自由に出し入れすることができます。
一方、法人化すると法人が稼いだお金は法人の所有物になりますので、社長であっても自由に法人のお金を使うことができなくなります。

もし、社長が個人的な目的で給料以外の金銭を法人から引き出した場合、会社から個人に対する「短期貸付金」となり、社長は、利息を付けて返済しなければなりません。
自由にお金を使いたいと思われる方は、個人事業のままにしておく方が良いかもしれません。

 

個人から法人へ切り替える際の注意点は?【仮想通貨】

2018-05-04

Q37 個人から法人へ切り替える際の注意点を教えてください

A37 譲渡・現物出資・贈与・賃貸借それぞれの特徴を把握しましょう

個人事業の資産を法人へ「どのような形態で引き継ぐか」、また「いくらで移転するか」、という点がポイントになります。
大きくわけると、「譲渡」、「現物出資」、「贈与」、「賃貸借」という4つの方法が考えられます。
それぞれの特徴・留意点を説明します。

譲渡
いちばんオーソドックスな方法で、手続きも簡便です。

個人事業と、法人成りした後の会社ではたとえ同じ事業主が引き続き営業していたとしても全く別の事業体として考える必要があります。
それゆえ、個人事業主が「売り主」、法人成りした会社が「買い主」となる通常の売買取り引きの延長と考えればわかりやすいでしょう。

留意点としては、法人側に購入資金が必要になることです。
また、個人事業主は「売る」わけですから所得が発生し、仮想通貨の譲渡であれば、譲渡した年の雑所得の計算に含めなければなりません。

なお、売買価格につきましては、取り引き時の時価で行うことが望ましいです。
時価よりも低い価格で譲渡(低額譲渡)する場合には、法人成りした会社は通常同族会社に該当するため、結局は時価取り引きしたものとみなされ、個人(売り主)は所得を認識するようにとの指摘を受ける可能性が高いものと思われます。
また法人側は、時価と譲渡価額との差額については受贈益として法人税が課税されるため、二重で課税される結果となります。
時価よりも高い価格で譲渡(高額譲渡)する場合には、譲渡価格と時価との差額については、法人成りした会社から役員(個人事業主)への賞与として取り扱われることとなります。
役員賞与については、税務上損金に算入することができないため、税務上は不利な結果となってしまいます。

現物出資
株式会社には設立時に資本金が必要となります。
資本金は一般的に金銭で拠出されますが、不動産や備品等の固定資産、商品在庫などの棚卸し資産を出資に充てることもできます。
これを現物出資といいます。

現物出資のメリットは、「お金」でなくても良いことですが、現物の客観的な評価のため、裁判所が選任した検査役の調査が必要となり、その分、費用と日数がかかります。
定款に記載の価額が相当であるという弁護士、税理士等の証明(不動産はさらに不動産鑑定士の鑑定評価が必要)を受ける方法もありますが、専門家への報酬が別途必要なうえ、譲渡のケースと比べ手続きは煩雑となる点が現物出資を行う際のデメリットです。

例外として、現物出資動産の総額が500万円以下の場合には、上記検査役の調査等は不要です。
実務上は、出資総額を500万円以下とする方法を採るケースが多いと思われます。
その際には、設立時の取締役等が「現物出資の価額が相当であるという調査報告書」が必要となり、その時の「市場価格」、「時価」で評価します。

以上の通り、出資価額は、出資した時点における現物資産の時価で引き継がなければなりませんので、上記の譲渡のケースと同様に、個人側は、出資時点で所得が発生し、出資した年の雑所得の計算に含めなければなりません。

贈与
個人事業主が法人成りした法人に「無償で譲渡する」という行為が「贈与」です。
取り引き効果としては、上記1で述べた「低額譲渡」とほぼ同じです。

メリットは、法人側に購入資金が要らないことですが、無償で「もらう」わけですから、時価相当額が受贈益とみなされ、法人税が課税されます。
また、個人にも、時価で譲渡したものとして、贈与した年の雑所得として認識する必要があります。
結果として、法人と個人、両方で課税される結果となり、あまり得策とは言えないと思われます。

賃貸借
所有権はそのままにして法人に「貸す」という方法です。

メリットは、法人側に資金が必要ないこと、資産の名義変更(所有権の移転)を伴わないことです。
また、個人は継続的に法人から利息収入を得ることができます。
利息として得た収入は雑所得に該当しますので、原則として、毎年、個人も確定申告が必要となってくると思われます。

法人化に際しては、以上のような諸々の事項を考慮のうえ、いずれかを選択することとなります。

 

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