個人から法人へ切り替える際のメリット・デメリットは?【仮想通貨】

個人から法人へ切り替える際のメリット・デメリットは?【仮想通貨】

2018-05-11

Q38 個人から法人へ切り替える際のメリット・デメリットを教えてください

A38 節税などのメリットも多いが、経費の増大などのデメリットも検討しましょう

まず、個人から法人化(法人成り)する場合の税金上のメリットは以下のような点になります。

法人化のメリット

1.税率
前述した通り、仮想通貨取り引きは雑所得に該当するため、個人の場合には所得税が5%から45%の累進税率により、住民税は一律10%の税金が課されることとなります。
さらに平成49年までは所得税率の2.1%相当の復興特別所得税も課されます。
その結果、所得が高い方で最高税率に該当する場合、課税所得の55.945%相当の税金が発生することとなります。

これに対し、法人に対する平成29年度の実効税率は33.8%(東京都の外形標準事業税非適用法人の場合)となっています。
つまり、一定の所得を超えると個人よりも法人の税率の方が低くなり税負担が軽くなる、この点が法人化するメリットの一つといえます。

2.給与所得控除の適用
個人事業の場合、収入から経費を引いたものが事業主の所得となり、その所得に対して所得税がかかってきます。

これに対し、法人化した場合には、社長の収入などは役員報酬という給与所得となります。
給与の場合、給与額面金額から給与所得控除を差し引くことができますので、一般的には個人事業の場合の所得税より税金が安くなるといわれています。

なお、給与所得控除というのは、サラリーマンの勤務にかかる「みなし経費」のようなものとお考え下さい。
一定の算式のもと、年収に応じた給与所得控除の額が所得税法で定められています。

3.所得の分散化
個人事業の場合にも、事業専従者給与の制度はありますが、仮想通貨取り引きの場合には前述の通り雑所得に分類されるため、親族に支払う給与を必要経費にすることは原則としてできません。

これに対し、法人の場合には、親族に対して支払った給与は、その職務内容からみて適正な金額の範囲内であれば、届け出を出さずに経費とすることができます。
また、一定の金額以下であれば控除対象配偶者や扶養親族とすることも可能です。

個人事業で、ある程度以上の所得がある人は、累進税率により税率が高くなり支払う税金も多額になります。
それゆえ、法人成りして親族へ給料を支給することで、一人で負担していた所得が家族に分散され、また、家族全員の給与から上記2で述べた給与所得控除額を差し引くことができるため、世帯全体で考えると、税金を下げる結果となります。

4.損益通算
個人が仮想通貨取り引きから得た所得は、原則として雑所得に区分されます。
雑所得で損失が生じた場合には、雑所得の範囲内での損益通算は可能となりますが、給与所得、事業所得等その他所得との損益通算は認められておりません。
したがって、仮想通貨取り引きで損失が生じた場合にも、給与等その他の所得と相殺することは認められず、その損失は切り捨てられることとなります。

これに対し、法人の場合には、その利益も損失も法人全体で計算することとなります。
もし法人が仮想通貨取り引きのみを行っている場合には、その仮想通貨取り引きにかかる損益が、法人全体の損益とイコールとなりますが、
仮想通貨取り引き以外の他の事業も営んでいる場合には、仮想通貨取り引きから生じた損益とそれ以外の事業から生じた損益とを合算した損益が、法人全体の損益となります。
つまり、仮想通貨取り引きで損失が生じたときでも、他の事業で利益が生じている場合には、双方事業の損益を通算することが可能となります。
この点は、仮想通貨取り引きを行う上で、個人と法人との大きな違いといえます。

5.退職金
個人事業の場合、本人または事業専従者に退職金を支払うことはできません。

これに対し、法人の場合には、適正な金額の範囲内であれば経営者や親族に対して、退職金を支給することができます。
退職金に対する所得税は、給料などの総合課税の所得に比べて非常に低く抑えられていますので、この退職金制度をうまく活用することで、効率的にリタイア後の資金を形成することが可能になります

6.欠損金の繰り越し
仮想通貨取り引きの場合、ときとして損失となる年もあるかと思われます。
ただし、仮想通貨取り引きの場合、原則として雑所得に区分されますので、その損失は、翌年以降に繰り越すことはできません。

これに対し、法人の場合には、仮想通貨取り引きによる損失などにより法人全体の決算が赤字となった場合、青色申告制度を適用している法人は、一定の条件のもとに翌年以降にその赤字部分を繰り越すことができ、
その翌年以降の利益と相殺することが認められています。その結果、繰り越し相殺することにより、その年の税金を減らすことができます。
なお、この翌年以降に繰り越される赤字額のことを「繰越欠損金」と呼びます。
この繰越欠損金は現行制度では9年間も繰り越すことができ、さらに平成30年4月1日から始まる事業年度以降で発生した繰越欠損金の繰越期間は10年間となります。

7.保険の活用
一般的に法人成りすると経費計上できる範囲が増えるといわれており、その範囲が顕著に増えるのが生命保険などの保険料です。
個人事業の場合、どんなに保険料を支払っても所得から差し引ける金額は上限12万円と決まっているため、節税効果として、ほとんど期待できません。

これに対し、法人を契約者として保険料を支払いますと、保険の商品によっては、半額または全額を経費とすることができる保険などもありますので、法人税の節税には大きな効果を発揮します。

生命保険を活用して退職金の準備や経営リスクの備えをするのであれば、節税効果が大きい法人で活用した方がより大きな効果を得ることが期待できるといえるでしょう。

次に、個人から法人化(法人成り)する場合の、税金上のデメリットについて説明します。

法人化のデメリット
1.法人維持費用の発生
個人の場合には必要なかった下記コストが発生し、若しくは増加します。

(1)法人設立費用
法人を設立する際に、登録免許税や定款認証手数料が発生します。
合同会社の場合約60,000円~、株式会社の場合には約21万円以上はかかります。
さらに設立手続きを司法書士などの専門家にご依頼される場合には、これに手数料が数万円加算されることとなります。

(2)登記費用
法人成りすると、会社法で定められている事項について登記しなければなりません。
具体的には、社名、会社の住所、事業内容、資本金の額、代表者の氏名、住所、役員の氏名などです。
これら登記された事項について変更があった場合、速やかに法務局へ変更の登記を行わなければなりません。
その変更の都度、変更内容に応じた登記費用が発生します。
また株式会社の場合には、取締役の任期が2年から10年と法定されておりますので、必ず任期改選の都度、登記手続きが必要となります。

(3)住民税均等割
法人の場合、住民税には所得に税率を乗じて計算する「所得割」の他に「均等割」と呼ばれる税金を支払う必要があります。
この均等割という税金は、資本金等の額や従業者数の人数に応じて金額が定められており、利益が出ておらず欠損年度の場合であっても発生する税金となり、最低でも年間70,000円の均等割の負担が発生します。

(4)社会保険料の発生
個人時代には社会保険の加入義務がなかった場合でも、法人成りすると従業員の数にかかわらず社会保険の加入義務が生じます。
たとえ代表者一人の法人であっても、加入義務は生じます。
社会保険に加入すると社会保険料の約半分を会社が負担することになりますので、これまで社会保険に加入していなかった場合には、かなりコスト増の印象を受けるかもしれません。

(5)経常コストの増加
個人の確定申告書はそれほど複雑ではないためご自身で作成される方も多いのですが、法人税や地方税の申告書は非常に複雑な仕組みになっており、
また申告書以外にも貸借対照表、損益計算書、個別注記表、勘定科目内訳書など提出しなければならない書類が増えます。
そのため、一般的には会計事務所と顧問契約を締結し顧問料を支払って依頼することが多いと思われます。

2.現預金の使い方
個人の場合、自分で稼いだお金は事業主のものとなりますので、自由に出し入れすることができます。
一方、法人化すると法人が稼いだお金は法人の所有物になりますので、社長であっても自由に法人のお金を使うことができなくなります。

もし、社長が個人的な目的で給料以外の金銭を法人から引き出した場合、会社から個人に対する「短期貸付金」となり、社長は、利息を付けて返済しなければなりません。
自由にお金を使いたいと思われる方は、個人事業のままにしておく方が良いかもしれません。

 

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