個人から法人へ切り替える際の注意点は?【仮想通貨】

個人から法人へ切り替える際の注意点は?【仮想通貨】

2018-05-04

Q37 個人から法人へ切り替える際の注意点を教えてください

A37 譲渡・現物出資・贈与・賃貸借それぞれの特徴を把握しましょう

個人事業の資産を法人へ「どのような形態で引き継ぐか」、また「いくらで移転するか」、という点がポイントになります。
大きくわけると、「譲渡」、「現物出資」、「贈与」、「賃貸借」という4つの方法が考えられます。
それぞれの特徴・留意点を説明します。

譲渡
いちばんオーソドックスな方法で、手続きも簡便です。

個人事業と、法人成りした後の会社ではたとえ同じ事業主が引き続き営業していたとしても全く別の事業体として考える必要があります。
それゆえ、個人事業主が「売り主」、法人成りした会社が「買い主」となる通常の売買取り引きの延長と考えればわかりやすいでしょう。

留意点としては、法人側に購入資金が必要になることです。
また、個人事業主は「売る」わけですから所得が発生し、仮想通貨の譲渡であれば、譲渡した年の雑所得の計算に含めなければなりません。

なお、売買価格につきましては、取り引き時の時価で行うことが望ましいです。
時価よりも低い価格で譲渡(低額譲渡)する場合には、法人成りした会社は通常同族会社に該当するため、結局は時価取り引きしたものとみなされ、個人(売り主)は所得を認識するようにとの指摘を受ける可能性が高いものと思われます。
また法人側は、時価と譲渡価額との差額については受贈益として法人税が課税されるため、二重で課税される結果となります。
時価よりも高い価格で譲渡(高額譲渡)する場合には、譲渡価格と時価との差額については、法人成りした会社から役員(個人事業主)への賞与として取り扱われることとなります。
役員賞与については、税務上損金に算入することができないため、税務上は不利な結果となってしまいます。

現物出資
株式会社には設立時に資本金が必要となります。
資本金は一般的に金銭で拠出されますが、不動産や備品等の固定資産、商品在庫などの棚卸し資産を出資に充てることもできます。
これを現物出資といいます。

現物出資のメリットは、「お金」でなくても良いことですが、現物の客観的な評価のため、裁判所が選任した検査役の調査が必要となり、その分、費用と日数がかかります。
定款に記載の価額が相当であるという弁護士、税理士等の証明(不動産はさらに不動産鑑定士の鑑定評価が必要)を受ける方法もありますが、専門家への報酬が別途必要なうえ、譲渡のケースと比べ手続きは煩雑となる点が現物出資を行う際のデメリットです。

例外として、現物出資動産の総額が500万円以下の場合には、上記検査役の調査等は不要です。
実務上は、出資総額を500万円以下とする方法を採るケースが多いと思われます。
その際には、設立時の取締役等が「現物出資の価額が相当であるという調査報告書」が必要となり、その時の「市場価格」、「時価」で評価します。

以上の通り、出資価額は、出資した時点における現物資産の時価で引き継がなければなりませんので、上記の譲渡のケースと同様に、個人側は、出資時点で所得が発生し、出資した年の雑所得の計算に含めなければなりません。

贈与
個人事業主が法人成りした法人に「無償で譲渡する」という行為が「贈与」です。
取り引き効果としては、上記1で述べた「低額譲渡」とほぼ同じです。

メリットは、法人側に購入資金が要らないことですが、無償で「もらう」わけですから、時価相当額が受贈益とみなされ、法人税が課税されます。
また、個人にも、時価で譲渡したものとして、贈与した年の雑所得として認識する必要があります。
結果として、法人と個人、両方で課税される結果となり、あまり得策とは言えないと思われます。

賃貸借
所有権はそのままにして法人に「貸す」という方法です。

メリットは、法人側に資金が必要ないこと、資産の名義変更(所有権の移転)を伴わないことです。
また、個人は継続的に法人から利息収入を得ることができます。
利息として得た収入は雑所得に該当しますので、原則として、毎年、個人も確定申告が必要となってくると思われます。

法人化に際しては、以上のような諸々の事項を考慮のうえ、いずれかを選択することとなります。

 

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