4月, 2018年

法人で所有する注意点は?【仮想通貨】

2018-04-27

Q36 法人で所有する注意点を教えてください

A36 タックスヘイブン税制の適用を考慮しましょう

海外法人を設立し、仮想通貨取引所のアカウントを通じ取り引きを行うケースです。
この際、タックスヘイブン税制の適用を考慮しておく必要があります。

実効税率が20%未満となる場合には、適用除外基準を満たさない限り、節税目的で設立された会社の株主に対し、日本と同額の課税となるように日本において課税されます。
この場合、個人株主の場合には、「雑所得」として課税されるため、節税のメリットを享受することはできません。

 

海外に住むことに。これからは? 【仮想通貨】

2018-04-20

Q35 今年から、シンガポールに住むことになりました。この場合、今までの取り引きについての納税はどうなるでしょうか?また、これからの取り引きについてはどうなりますか?

A35 海外転出届を忘れずに行い、現地の税制を理解しましょう

節税意識が高い方の中には、海外に移住するという選択肢をもっている方もいるかと思います。
この質問は、このように節税のために海外に移住する、ということを選択した場合に関する税務に関するものです。
ここでの前提は、日本国の居住者ではなくなっている、ということになります。

国内法による取り扱い
我が国の所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、または、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。

「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」ことになります。

したがって、「住所」は、その人の生活の中心がどこかで判定されます。

ある人の滞在地が2か国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを判定するためには、職務内容や契約等を基に「住所の推定」を行うことになります。

「居所」は、「その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所」とされています。

法人については、本店所在地がどこにあるかにより、内国法人または外国法人の判定が行われます。

現地での取り扱い
シンガポールの個人所得税は最大税率で22%ですが、キャピタルゲインに関して非課税となっています。

なお、課税対象となる所得の範囲ですが、全世界の所得課税を採用する日本とは異なり、シンガポール国外で生じた国外源泉所得はシンガポールに送金されない限り非課税とされますので、仮想通貨に関する所得も同様に扱われると考えます。

例えば、シンガポールに居住し、Kraken、bitflyerやZaifなどの日本の取引所で仮想通貨取り引きを行い、利得を得た後に日本国内の自己の銀行口座に出金した場合、
日本においての当該金額に関する利息については課税、シンガポールおよび日本においての当該利得の総額について非課税ということになります。

なお、シンガポール国内において、物品などの購入の支払いに仮想通貨を使用した場合、物品税(Goods and Services Tax、GST)として、7%が課されます。
また仮想通貨の取り引きを事業(Business)として行う場合には、通常の課税に服します。
取引所やマイニングファームなどがその典型となります。

なお、日本からの出国に際しては、海外転出届を住民登録窓口に提出(=住民票を抜く)しておく必要があります。
これを行わずに、実質的に日本国の非居住者となっていても後日それを証明することは煩雑ですし、また住民税は1月1日現在の住民票の所在地を基準に賦課されていますので、海外転出届を忘れずに行う必要があります。

なお、出国日までの所得については、日本で納税を行う必要があります。

 

自己の名義の他、子供の名義でも取引所のアカウントを開設することは意味がある? 【仮想通貨】

2018-04-13

Q34 自己の名義の他、子供の名義でも取引所のアカウントを開設し、取り引きを行うことは意味があるでしょうか?

A33 贈与税や扶養家族の範囲に注意して、新しい時代に馴染ませましょう。
所得を不当に分配することがないように注意を

個人のアカウントと法人のアカウントの両方で取り引きを行う方が増えてきています。
取引所の規約にもよりますが、親権者として子供名義のアカウントを開設し、扶養の範囲で取り引きを認めておられる方もおられます。

新しい時代の新しい動きにいち早く子供がなじめるようにということもありますが、税務面では子供も別人格ですので、税率は個々人の所得に基づき行われることになります。
贈与税の問題、扶養家族の範囲に属させるべきか否かなどを総合考慮したうえで、子供のアカウントを開設し、取り引きを認めることは意味があると思います。

なお、その場合、子供名義のアカウントを用いて、所得を実質上、不当に分配することがないようにしておく必要があります。

 

どのような属性の投資家が仮想通貨投資を行った方が良いのか 【仮想通貨】

2018-04-06

Q33 どのような属性の投資家が仮想通貨投資を行った方が良いのでしょうか。

A33 取り引きの記録や送受信記録をこまめに整理できる几帳面さが必要

属性というほどのことではないと思いますが、几帳面な方が行うのが良いでしょう。
税務面で、取り引き記録をこまめに作成できない方は仮想通貨取り引きには向いていないといえます。

たとえば納税に際して、各取引所での取り引き記録をダウンロードし、統一した形式で整理をしないと税理士も税額を算定できません。
その他、仮想通貨を保管してウォレットの送受信記録なども同様に記録として整理しておく必要があります。

各取引所での取り引き記録の保管と整理
上述のとおり、細かい記録の管理が必要です。

ウォレットの送受信記録の保管と整理
これは取引所の記録の整理に使用しているフォーマットを使用すれば良いでしょう。

Depositの場合の記録例
日本円換算額の算定
所得税の確定申告は、日本円で計算しなければなりません。
ビットコインやイーサリアムを含め、日本円と仮想通貨の取り引きを行った場合には、取引所の国内外を問わず、きちんと記録を残しておく必要があります。

日本円以外の法定通貨や仮想通貨での売買(仮想通貨同士の交換)を行った場合、取引所以外の支払いや受取などの円換算レートについては、同一日における自分が主として使用している取引所の対円での交換レートを記録します。

というとかなり煩雑に思われるかもしれませんが、仮想通貨同士の交換においては、ビットコインやイーサリアムが片側の通貨(Bidであっても、Askであってもそうです)になることがほとんどです。
従って、まずはビットコインとイーサリアムの価格の記録を年間通して保持することとします。
次に、主たる取引所として使用している取引所における、ビットコインやイーサリアムの開始価格、最高価格、最低価格、終値などを毎日記録し、その取引所を継続して使用することを条件とし、自らの取り引きに適切と思われる値を選べばよいものと思います。

仮想通貨の期末残高数量
これは各取引所やウォレットごとに作成します。

同様に、同じビットコインであっても、取引所、ウォレットごとに残高を記録し、確定します。取り引き履歴も同様です。

領収書の保管
必要経費に計上する金額について、領収書、請求書、納品書、振り込み明細などをすべて保管・整理しておきます。
具体的には、仮想通貨のミートアップに参加する際の交通費や会費、ハードウェアウォレットの購入代金、取り引き用パソコンの購入代金、その他仮想通貨での利益を得るための経費は、雑所得の損益計算に含めることができます。

なお、ビットコインなどで物品等を購入した場合には、必ず購入した物品の領収書を保管しておいてください。
ウォレットからの送金が何に使われたのかを明らかにする必要があります
(しかし実際には、領収書等の発行がなされないものも多いので、メールでのやりとり、画像での保管などを含め、取り引きの存在が証明できるように可能な限り努めるべきでしょう)。

 

個人と法人ではどちらで仮想通貨の取り引きを行うのが良い?【仮想通貨】

2018-04-03

Q32 個人と法人ではどちらで仮想通貨の取り引きを行うのが良いですか?

A32 一般的には、「法人成り」という言葉が示すように、個人事業主で事業を始め、事業が安定した後に法人化を行います。
しかし仮想通貨取り引きの場合、マイニング等を大規模に行うような場合を除けば、実施する作業の内容は個人とほとんどかわらず、法人でもその代表がひとりで取り引きを行うことになるでしょう。
そこで、最初から法人で取り引きを行うという選択肢もありえます。

この場合、個人事業主などが代表取締役1名、株主1名の株式会社などを設立します。
いわゆる一人会社を設立します。

法人化により適用される税法が法人税法になるため、最高税率は個人の55.945%(所得税45%、復興特別所得税0.945%、住民税10%)ではなく、平成29年度実効税率33.8%(外形標準課税非適用法人、東京都の場合)となります。

1,000万円の利益があった場合と1億円の利益があった場合で比較したのが次です。

[個人の場合](他の所得および基礎控除以外の所得控除は考慮しないものとします)
仮想通貨で1,000万円の利益があった場合
1,000万円-38万円(基礎控除)=962万円(所得税課税所得)
962万円×33%-1,536千円=1,638,600円(所得税A)
1,638,600円×2.1%=34,400円(復興特別所得税B)
1,000万円-33万円(基礎控除)=967万円(住民税課税所得)
967万円×10%=967,000円(住民税C)
合計(A+B+C)=2,640,000円(税負担率:26.4%)

仮想通貨利益1億円の利益があった場合
1億円-38万円(基礎控除)=9,962万円(所得税課税所得)
9,962万円×45%-4,796千円=40,033,000円(所得税A)
40,033千円×2.1%=840,600円(復興特別所得税B)
1億円-33万円(基礎控除)=9,967万円(住民税課税所得)
9,967万円×10%=9,967,000円(住民税C)
合計(A+B+C)=50,840,600円(税負担率:50.84%)

[法人の場合](平成29年4月1日開始事業年度、資本金100万円と仮定。軽減税率は考慮せず標準税率を用いるものとします)
仮想通貨で1,000万円の利益があった場合
1,000万円(課税所得)×23.4%=2,340,000円(法人税)
234万円×4.4%=102,900円(地方法人税)
234万円×12.9%=301,800円(住民税)
1,000万円×6.7%=670,000円(事業税)
67万円×43.2%=289,400円(地方法人特別税)
住民税の均等割:別途年額70,000円
合計:3,774,100円(税負担率:37.74%)

仮想通貨で1億円の利益があった場合
1億円(課税所得)×23.4%=23,400,000円(法人税)
2,340万円×4.4%=1,029,600円(地方法人税)
2,340万円×12.9%=3,018,600円(住民税)
1億円×6.7%=6,700,000円(事業税)
670万円×43.2%=2,894,400円(地方法人特別税)
住民税の均等割:別途年額70,000円
合計:37,112,600円(税負担率:37.11%)

単純に税金面だけをみれば、利益が大きくなった場合には法人化することによる節税効果は一見大きく見えます。
しかしながら、法人の利益は法人のものであり、一人会社といえども、そこにある金銭を自由に使うことはできません。
そのためには、給与や役員報酬という形で、代表者個人に支払うこととなり、そこでは別途所得税が生じます。
その他法人の設立、決算業務、解散・清算などにかかわる費用も念頭においておく必要もあります。
法人化する場合には、こういったこともシミュレーションしたうえで行うべきではないかと思います。

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